1952(昭和27)年、遊佐町杉沢地区から縄文晩期中葉(約2500年前)のものと推定される「杉沢の土偶」が出土しました。高さ18.3cm、頭部の一部が欠けたほかはほぼ完全な状態であるために、当時は山形県内だけでなく全国的にも話題になったようです。現在は奈良国立博物館に国の重要考古資料として収蔵されていますが、町は許可を得てレプリカを作成し公開してきました。2016(平成28)年10月から約半年間、奈良国立博物館のご厚意により遊佐町防災センターで里帰り展示が行われ、普段は見ることのできない「杉沢の土偶」を一目見ようと、多くの町民が見学に訪れました。
遊佐町内には多くの遺跡がありますので、この地が古より人が生活するうえで適した環境であったことが伺えます。今後もこうした貴重な出土品があることを期待したいと思います。
2016(平成28)年の里帰り展示のご案内(チラシ)より
右の頭髪部(髷:まげ)が欠けていますが、ほぼ完全な形で出土した中空(ちゅうくう:中が空洞)の土偶です。目は、いわゆる遮光器(しゃこうき:まぶたを閉じた様子)状に表現されています。肩や腰の文様は、縄目紋様を施した後に、部分的に縄目をすり消す磨消縄文(みがきけしじょうもん)の手法で飾られ、腹部を縦に貫く線は、二重の隆線(盛り上げた線)で強調されています。また、臍(へそ)の部分は、内部に連なり(穴が空いている)、腰部の文様も巧みに強調して表現されています。
学術的な発掘調査によって発見されたのではなく、正確な出土の状況は定かではありませんが、特異な状況が伝えられています。北側と東西に約20cmの川原石を置いて作った石囲いの中に、頭部を北に向けて仰臥(ぎょうが:あおむけ)した状態で埋納され、その上に径約30cmの蓋石がかぶせられていました。あたかも、人間が埋葬されたかのように置かれ、土偶の性格を考える上で、貴重な出土例です。(奈良国立博物館データベースより抜粋、加筆)
こちら(奈良国立博物館)もご覧ください。 土偶(山形県遊佐町杉沢遺跡出土)|奈良国立博物館 (narahaku.go.jp)